【国家試験 総評】第117回 歯科医師国家試験解説

117回 歯科医師国家試験 総評

歯科医師国家試験の施行について┃厚生労働省

はじめに

第117回歯科医師国家試験を受験された皆様、2日間プレッシャーのかかる状況の中、本当にお疲れ様でした。今年受験された受験生の方、今後受験される歯学部在学生の方も今年の国家試験の傾向が気になるのではないかと思います。

 

ここでは、117回歯科医師国家試験全体を通しての総評と、各パートにおける個別の問題について具体例を挙げながら講評をしていきたいと思います。加えて、対策についても簡単ですがお話します。

これから国家試験を受験される方にもわかりやすいように説明している箇所(アンダーライン箇所)もありますが、知っている方は読み飛ばして頂いてかまいません。

あくまで当予備校講師としての見解になりますので、他予備校などの講評などと異なることがあるかもしれませんがご了承頂けますようお願い致します。

 

【全体解説】

第117回国家試験の難易度は例年通り、もしくはやや易といった印象をうけます。

全体的に平均点などに関しましても例年より若干高くなるのではないかと思われ、実際に他予備校の採点サービスなどを拝見しても平均点は高くなっていました。

基本的な知識を問う問題も多く解きやすいと感じた受験生の方も多かったのではないかと予想されます。

近年の傾向

117回を含め近年の歯科医師国家試験の傾向として、全身疾患を含む内科的な知識を問う問題が多く出題される傾向になってきています。高齢化が進む中で基礎疾患を持っている方が増加すると予想され、内科的疾患を持つ方の歯科治療に携わることが多くなることを背景としているのではないかと思われます。

 

また、歯科医師においても歯科疾患のみならず全身疾患について理解するようにというメッセージがこめられているのではないかと考えられます。

また、少し古い問題にあったような単純に診断を選ばせるような問題は減少しており、実際の臨床にでたときに使える知識や、考えなければいけない事象について問う問題が少なくありませんでした。

 

【各分野解説】

必修問題解説

受験生の方はご存じだと思いますがA~D問題の各20問が必修問題となっています。計80問あり、合格基準として80%以上の正答が求められます。117回の必修問題は、例年通り基礎医学、臨床より万遍なく出題されていました。

116回国家試験より導入されたX2問題もほぼ去年と同じ問題数出題されていました。難易度は例年通りでEichnerの分類を問う問題や下顎智歯抜歯の切開線を問う問題など比較的基本的な知識を問う問題が多かったように思います。

 

英語問題についてもとりたてて難易度の高いものではなかったようでした。必修問題は基礎医学から臨床まで幅広く出題されますので偏りなく勉強することが大切かと思います。

しかし、範囲が膨大なため勉強法に困る方も多いです。麻生デンタルアカデミーから出版されている必修naviなどを活用して基本的な知識をおさえていきましょう。

・必修navihttps://www.azabu-dental.co.jp/category/NAVI/

 

基礎医学解説

基礎医学における出題も万遍なく出題されており、全体的な難易度はそれほど高くないように感じました。基礎医学の分野にかんしても口腔領域の知識だけではなく、全身疾患にからめた問題が出題されていました。

例えば、細菌学に関しての問題であるB47で、選択肢にピロリ菌、結核菌、A群溶連菌などの選択肢があり口腔内以外の疾患に関する細菌学の知識なども必要な問題が出題されていました。

 

※問題は発表され次第、アップします。

 

基礎医学は勉強量が膨大で、臨床が始まってしまうとなかなか復習に時間をとれないことも多いです。ですので早い段階から復習を少しずつでも開始することをおすすめします。

勉強のペースをつかみにくい、どこから勉強していいかわからない場合は、当予備校などを利用するのも一つの方法かと思います。

臨床科目解説

臨床科目では、治療の必要性を説明したものの拒否されている症例であるB78やD63、D65など実臨床や訪問歯科診療において遭遇するような場面での診断や対応を求められている問題が出題されていました。

このような問題は近年の国家試験において出題数が増加傾向にあり、単純な知識の暗記だけでは対応できない問題も多く出題されています。

 

 

 

 

※問題は発表され次第、アップします。

対策としては、臨床実習などの際に、症例を通して知識を深めていくのが一番の勉強法ではないかと考えています。

衛生学解説

117回歯科医師国家試験では、幅広く衛星学の知識を問う出題となっていました。難易度としては標準的な出題が多く、きちんと勉強していけば正答できる問題が多いように感じました。

また衛生学では、感度・特異度などのCBTでも聞かれるような出題などもみられましたので、基本的な知識の漏れがないようにして、確実に得点することが重要かと思われます。

衛生学は直近になって詰め込むのでは、知識の漏れや抜け落ちが多くなってしまいます。時間をかけて1日少しずつでもいいので進めていくことをおすすめします。

 

【今後の傾向予想】

今後の傾向としては、全身疾患の知識を問う問題は多く出題されることが予想されます。どうしても歯科における知識を学習していくことがメインになってしまうとは思いますが、高齢者歯科や歯科麻酔の勉強の際に全身疾患の知識を深めていくことが重要になってくると考えます。

また、ノーベル賞や新しく認可された薬剤がある場合には、その後の国家試験に反映されて出題されることも多いですので、最新の医療情報についても調べておく必要があると考えます。

 

臨床問題に関しては、これからも実臨床に即した問題が多く出題されることが予想されます。その場合、他の科(口腔外科と矯正歯科など)にまたがった出題が増加することも考えられますので、1科目ごとの勉強をするのではなく、他の科目に関連させて知識を整理していく必要があるかと思います。

 

最後になりますが、この記事をお読みいただきありがとうございました。国家試験の勉強法で不安などがありました際は、当予備校にご相談いただければと思っております。受験生の皆様の合格を心よりお祈り申し上げます。



著者プロフィール

CES歯科医師国試予備校 講師

国立大学歯学部歯学科を卒業、総合病院歯科口腔外科での研修を経て大学病院口腔外科学医局に入局。大学院に進学し、基礎医学の研究室にて博士号取得。その後、総合病院歯科口腔外科などの勤務を経て、現在CES歯科医師国家試験予備校にて講師として勤務。