118回歯科医師国家試験|歯科保存学の出題傾向と対策
118回歯科医師国家試験における歯科保存学の出題傾向
ここ数年、歯科保存学に限らず全科目の必修・一般問題でタクソノミーII型の問題(解釈型:設問で与えられた情報を理解・解釈し、その結果に基づいて解答する)が増加している。
結果的にタクソノミーI型(単純想起型:単純な知識の想起によって解答できる)の問題は減少傾向にある。
歯科保存学の問題で一例を挙げると、
A-26:直接覆髄法と生活断髄法で共通して行うのはどれか。2つ選べ。
a 圧迫止血、
b 歯髄の切断、
c 天蓋の除去、
d 感染歯質の除去、
e 次亜塩素酸ナトリウムでの洗浄
これがタクソノミーII型で、2つの治療術式を想起し、それらから共通の処置を見出して解答することになる(正解はd e)。
歯科保存学の科目別問題数は調べた限りで、
・歯周病学23問(臨床症例問題12問)
・歯内療法学14問(臨床症例問題6問)
・保存修復学13問(臨床症例問題8問)
であった。
基礎科目や衛生学とオーバーラップする部分もあり提示した数字は正確でないと思われるが、歯周病関連の出題が多いのは事実であろう。
以下に科目別の出題傾向を示す。
1.歯周病学
歯周病関連の問題で全般的に難問は少なかったように思われる。
最近の傾向としては、歯周治療の術式を問う問題が増加している。
・グレーシーキュレットの操作法(A-82)
・歯肉切除術の術式(B-53)
・歯槽骨に向けた内斜切開(C-6)
・TBIと暫間固定の次に行う処置(C-52)
などである。
また、一昨年に削除問題となった歯周病の新分類に関する事項(ステージとグレードの項目)が必修問題として改めて出題された(D-5)。
臨床症例問題は、昨年までよく出題された歯周外科での切開線やGTR膜の設置法などの難問は減り、オーソドックスな症例問題が増え、診断方法、フラップ手術、再生療法に関する問題が目立った(A-32、B-23、B-84、C-25、C-52、D-35)。
歯周形成手術に関する症例問題は、結合組織移植術を正解とする定番の問題(A-64)の1問のみであった。
治療内容を問う問題で解答に迷う問題(A-78、D-39)もあったが、明らかに間違った選択肢を消去することで正解を導くことが可能であった。
このほか
一般問題_D-76:歯周病の二次予防はどれか。2つ選べ。
a SRP
b 暫間固定
c 歯科保健指導
d 生活習慣の改善
e プラークコントロール
は、容易に解けそうだが迷ってしまうタクソノミーII型の問題である(正解はa b)。
2.歯内療法学
歯髄炎と根尖性歯周炎に関する問題が大半であり、それらの検査法、症状、処置についてまんべんなく出題されていた。
最近よく取り上げられる歯科用コーンビームCTに関連する問題が4題あった(A-35、B-35、D-21、D-70)。
また、Endodontic treatmentを正解とする英語の問題が出題された。とくに奇抜な問題はなく、歯内療法学の教科書をしっかり理解し復習しておけば7割以上は解ける問題であろうと思われる。
定番的な問題を挙げると、
・急性根尖性歯周炎骨内期の処置(A-11)
・根管ファイルのISO規格(B-87)
・象牙質知覚過敏の痛みと神経線維(C-20)
・抜髄が適応となる疼痛の種類(C-31)
などである。
臨床症例問題は、
・上行性歯髄炎の診断と処置(B-68)
・急性根尖性歯周炎の当日対応(C-42)
・歯根垂直破折の診断(C-76)
などが出題されたが、これらは従来から出題されている内容と類似した問題であるので難しくはない。
症例問題としてはあまりみかけないアペキシフィケーションに関する問題(D-34)も出題されていたが、臨床写真からアペキシフィケーションの適応であることが分かれば解答は難しくない。
総じて、歯内療法学の問題は例年通りの傾向であったと言えるだろう。
3.保存修復学
出題された問題は、コンポジットレジン(CR)の性質や充填における前処理、窩洞形成法、充填過程で用いる器具などに関する事項が大半であった。
今回メタルインレーなどの金属に関する出題はなく、ここ数年でCRに関する出題が全盛となった。
一般問題では、Tooth wearの原因を問う容易な問題もあったが、CAD-CAM用CRの性質(B-40)、CRのフィラーの性質(B-86)などの基礎問題はやや難しい。
とくに、初期活動性根面齲蝕の管理の問題(B-57)で、永久歯であまり使用されないフッ化ジアミン銀を正解肢の一つに選ぶのには躊躇する。
また、光重合CRの硬化反応の起点を回答する問題(D-74)では、すべて略号の選択肢から1つを選ぶのは難しいように思われた(正解はDMAEMA)。
臨床症例問題については、全般的に従来の傾向に変わりはなく、過去問題をしっかり押さえておけば7割方は解答できる問題のように思われた。
症例問題のほとんどが、
・CR充填窩洞での円滑な曲線付与(A-24)
・オフィスブリーチの術式(A-61)
・上顎前歯の切端部破折症例の治療法選択(B-27)
・5級窩洞の充填時の歯肉圧排(B-36)
・CR修復時の隔壁設置(C-50)
・当日処置としてのCR充填内容(D-23)
・根面齲蝕の活動性判定法(D-25)
・1ステップCR充填における術式(D-66)
など、CR充填の術式(材料や器具を含む)に関するものであった。
従来から、保存修復学の問題は易しそうで難しい問題が多い。保存修復学では細かい部分の用語が多く、さらに選択肢で混同する用語が設定されていたりするので、それらに誘導されないように的確に記憶しておくことが重要であろう。
◯T先生