【国家試験 総評】第118回 歯科医師国家試験解説

118回 歯科医師国家試験 総評

歯科医師国家試験の施行について┃厚生労働省

はじめに

第118回歯科医師国家試験受験者の皆様、2日間本当にお疲れ様でした。自己採点をしたり、様々な採点サービスを利用したりと、肩の荷を下ろしながらも結果が出るまでやきもきしているところかと思います。

ここでは118回歯科医師国家試験について各パートの講評及び全体の講評、今後の傾向や対策について簡単にお話します。受験生の皆様や次年度以降に受験生となる皆様の参考になりますと幸いです。なお、こちらはあくまで当予備校講師としての見解であり、他予備校等の講評とは異なることがございますのでご了承ください。

117回の解説はこちら

 

【全体解説】

臨床問題は基礎問題に比べ易問が多かった印象です。基礎問題も一見簡単な問題が増えたような印象を受けますが、選択肢で迷わせる問題も多く、全体の平均点は例年から大きくは変わらない~高めの予想です。

116回、117回と比較し、徐々に全身に関連した問題が増加している印象です。歯科であまり教えていないトピックも目立ちましたが、救急や生理学の出題増加も見られたかと思われます。

また、生理学や解剖学など基礎医学について定期試験で問われるような問題もちらほら見られ、在宅医療に関する問題も詳細化した印象です。

 

必修問題解説

受験生の方はご存知だと思いますが、A~Dパートの各冒頭20問が必修問題となっています。合格基準として80%以上、つまり80問中64問以上の正解が必要となります。

118回の必修問題は例年通り基礎から臨床まで万遍なく出題されており、ABパートを中心に難しめの問題もやや出題された印象です。D12の英語問題は「pulp」が分かれば比較的容易に選択できたでしょう。

 

対策としては、以下を提案します。

  • 出題の多い分野である衛生学をしっかり押さえる。『実践』や『Answer』の衛生パートを周回するだけでも力はつきますが、さらに『Dr.加藤の国試合格ノート』を一読し、単語帳を法律の暗記等に活用するのがおすすめです。
  • 必修navi』や過去問集の必修問題パートを周回する。必修問題には他問題の対策では頭に入りにくいややニッチな暗記事項が出題されることもあるため、必修問題に特化した対策は重要です。
  • これは現在講義を受ける歯学部生向けですが、生理学や発生学など基礎をないがしろにせずしっかり理解しましょう。一見分からない問題が出題されても、理論から推理することで分からないなりに選択肢を選べるようになります。

・実践https://www.azabu-dental.co.jp/category/PRACTICE/

・Answerhttps://www.shien.co.jp/category/146

・Dr.加藤の国試合格ノートhttps://www.azabu-dental.co.jp/category/NOTE/

・必修navihttps://www.azabu-dental.co.jp/category/NAVI/

 

Aパート解説

基礎問題も臨床問題も例年通りの難易度である印象です。A36、A56、A62、A72などは推測が必要な問題として目立ちました。

A90は臨床統計からの出題でしたが、寄与危険度は臨床統計の計算値の中で重点的に取り上げられているものであるため解答できなかった受験生は少ないでしょう。

 

A31ではジルコニアとチタンの物性が比較され、性質が近い分選択肢を不安に思った受験生もいることでしょう。落ち着いて考えると金属の方が熱伝導率と靭性は高いはずだと導けます。

材料の性質について暗記する際は無機材料・有機材料などというように大きなくくりで並べてから細かく並べるようにすると覚えやすいです。

Bパート解説

基礎問題も臨床問題もやや易しい印象です。

B43は食道までの嚥下は可能だが食道の通りが悪くその後逆流してむせてしまうという珍しい設定の出題でしたが、食道に達するまで誤嚥が起きていないこと、頸部後屈は嚥下時の気管侵入を防ぎ頭部挙上訓練は食道開口部を開くことを押さえていれば選択できたでしょう。

B64などは医学連携としての色が濃い問題だったかと思います。B85では新出範囲の漢方に含まれる立効散が出題されましたが、立効散は歯科領域で最も大切な漢方薬の一つであり、少ない対策でも解答できた受験生は多かったでしょう。

Cパート解説

基礎問題も臨床問題もやや易しい印象です。C79C83は大学で実習や講義を行っていないことも多く、選択が難しい問題となったかもしれません。

Dパート解説

基礎問題も臨床問題も例年通りの難易度である印象です。

D58は大学の実習でもあまり強調されていない部分からの出題だと思いますが、プローブ圧やエンジンの回転数、超音波スケーリングの設定など実臨床で必要になる数値と共に覚えてほしいというところでしょうか。

D85は口腔外科実習の内容次第では選択の難しい問題であったかもしれません。D81などは医学連携としての色が濃い問題だったかと思います。

 

【今後の傾向予想】

今後の傾向としても医科分野の出題増加は予想されますが、個人での対策は難しいことも多いため、大学での試験対策にはよく耳を傾けるようにしましょう。漢方についてはB85で見られたように西洋医学の薬と関連付けて出題されることが予想されます。

漢方については歯科保険収載されているもの、その効能、生薬の副作用、生薬と収載薬の関連などを押さえておくといいかと思います。116回の対策から漢方は取り上げられており、模試に出題されているため、過去の模試を練習として用いるもの効果的です。

 

また、実習からの出題もやはり増加していくと予想されるため、縫合の手技や術式等、実習についてはしっかり復習するようにしましょう。

在宅医療については対策が難しい部分も多いですが、衛生学、放射線科実習や高齢者歯科実習、麻酔科実習で学んだこと、全身疾患に関する知識を復習し、総合的に推測することで分からない出題に対応していきましょう。

学部生は二年次に開講される基礎医学についてしっかり理解し、在宅医療の見学等を行ってみてください。



著者プロフィール

CES歯科医師国試予備校 C先生

東京医科歯科大学首席卒業。CES歯科医師国家試験予備校講師。進級対策、国試対策ともにすべての範囲を担当しています。一見難しく感じる問題もわかりやすく解説します。