【2025年版】歯科医師国家試験|出題傾向&科目別勉強法を徹底解説
はじめに
夏が近づき、国家試験対策に向けて集中的な勉強をする季節になりました。
今回は歯科医師国家試験対策について、科目別の特徴をお話しようかと思います。
国家試験対策全体の流れや模試結果の分析方法等は別の記事にて紹介していますので、適宜ご参照ください。
近年の傾向について
特に近年において、歯科医師国家試験の問題は複数分野を関連させた問題(例えば、CTから皮下気腫の進展範囲を判断し、救急対応をするか抗菌薬投与を行うかを選択する問題ではCTを読む力(放射線科)、縦隔を見分ける力(解剖学)、抗菌薬を選択する力(薬理学)、救急の必要性を判断する力(口腔外科)が求められます)が増加し、特定の分野に絞った対策が難しくなっています。
また、医歯学連携を目的に、今まで歯学部ではあまり教えられていなかったが医学部では比較的オーソドックスな事項(ACE阻害薬によって副次的に空咳が誘発されるが、その副作用を誤嚥性肺炎予防に用いていることなど)や、生理学薬理学の基礎的な考え方を用いた思考問題も出題が増加しています。
従って、6年生より低学年の方で基礎に自信がない方や定期試験で苦手科目の勉強を後回しにしてしまった方は授業やCBT対策本の見直しを行ってから国試対策本の解題に入る方が好ましいと思われます。
上記の出題傾向について、系統的に対策を行っている予備校もあるとは思いますが、歯科用の参考書にはあまりまとまっていないことが多く、低コストで対策を行う方は大学の講義を復習し理解に努めることが最も効果的だと思います。
大学の講義は内容が細かく、理解するには往々にしてチャネルやポンプなど基礎的な知識も必要になる、先生の熱意の表れとして最先端の領域であるやや未来の話をされがちであるが、その考え方に通ずる問題を基礎問題として出題されることがある、国試の出題傾向に合わせて講義内容が増減するからです。
ただ、一部予備校での学習を前提とした講義を行う大学もございますので、よく確認し、必要に合わせてご相談ください。
6年生の方は、過去問演習を行う過程で出現した分からない問題について、理解に努める意識をもって復習を行いましょう。
次に、科目ごとの出題の雰囲気と対策について。
以下に大まかなものをまとめました。
出題の傾向と対策
●歯科保存学
出題:
う蝕(虫歯)病因論と進行過程
→先駆菌層と混濁層の順番、穿通性う蝕と穿下性う蝕、ステファンカーブ等
歯髄疾患(特に歯髄炎と壊死)
→歯髄の老化現象、歯髄炎の臨床診断等
根尖性歯周炎
→レントゲン読影、単純性根尖性歯周炎と化膿性根尖性歯周炎の違い等
歯内療法(根管治療)手技と材料
→Kファイル・Hファイル、根管充填材の特徴、覆髄法等
対策:
臨床問題に関しては、過去問集を解きながら診断方法を覚えましょう。歯髄疾患の診断についてはフローチャートがありますので、覚えましょう。材料を中心に暗記事項がまとまっていますが、分量としては少なめなので、早期にもしくは重い分野の合間に対策する形式がおすすめです。なお、審美歯科の発展に伴いブリーチと初期う蝕も注目され続けていますので、手技や診断基準等を確認しましょう。
●歯周病学
出題:
歯周炎・歯肉炎の分類と診断基準
→歯周病重症度の分類等
歯周ポケットとアタッチメントレベル
→CPIを主とする各健診項目等
スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
→器具の選択と使用方法等
歯周外科の基本的知識
→GTR法用いられる縫合や材料、歯肉溝切開を行う術式、一次固定・二次固定等
対策:
難易度の高い出題はほとんど歯周外科関連になります。健診項目は衛生学分野に詳しくまとめられています。歯周外科で用いられる術式や材料について確認し、グレード分類についても確認しておきましょう。対策のタイミングはこちらも早期もしくは重い分野の合間がおすすめです。
●補綴学
出題:
全部床義歯(総義歯)の設計と印象法
→フレンジテクニック、パラトグラム等
部分床義歯の支台装置・維持設計
→関節支台装置の設置、リジッドな設計、クラスプの要件等
クラウン・ブリッジ補綴の適応と形成
→前蝋着・後蝋着の手順、ブリッジ抵抗性の計算等
咬合調整、咬合の力学的考察
→フルバランスドオクルージョンでの歯牙接触等
対策:
特殊印象、蝋着について手技を確認しておきましょう。咬合接触や部分床義歯の設計については一度理解すれば頭に残りやすいので、時間を取ってしっかり確認しましょう。合間での対策は難しい分野かと思います。
●口腔外科学
出題:
智歯(親知らず)抜歯の適応とリスク
→下歯槽神経・上顎洞近接、痛み止めと抗菌薬の処方等
顎関節症の診断と治療
→顎関節症の分類(フローチャート)、ヒポクラテス法等
嚢胞(特に含歯性嚢胞、歯根嚢胞)
→嚢胞壁や内容物の特徴、パノラマ所見の特徴等
口腔癌の診断基準と治療法
→病理画像の特徴、抗癌剤、全身疾患との関連、TNM分類等
対策:
口腔外科領域での出題は範囲として新しいものを出題することが難しく、覚える量は多めですが、過去問を見ながら出題されている事項を覚えればかなり簡単に対策できがちです。他の受験生も対策しやすい分野なので必修問題と同じく直前の再確認は必要になりますが、毎回の模試で高得点を取っていたい方は最序盤に対策を行いましょう。解剖学との関連問題が穴になりがちなので、外頸動脈・三叉神経の分岐や走行には特に注意しましょう。
●小児歯科学
出題:
エナメル質形成不全
→色や疾患ごとの性質の特徴等
乳歯と永久歯の交換時期
→補劇装置の使用等
小児のう蝕予防(フッ化物応用)
→年齢ごとのフッ素の使用方法や濃度、歯磨剤の成分等
行動調整と歯科恐怖症への対応
対策:
乳歯・永久歯の歯胚・歯根・歯冠形成時期、補隙装置の使い分け、乳歯冠の使用方法(プライヤーの種類等)を覚えましょう。他は口腔外科や衛生学、矯正学、補綴学と関連して学習することになります。小児科も口腔外科と同様の特徴がありますので、序盤に対策を行いましょう。
●矯正歯科学
出題:
不正咬合の分類(Angle分類など)
→ディスクレパンシーの計算等
成長発育と顎顔面の関係
→骨の添加部位、膜性骨・軟骨性骨、成長曲線、手根骨による年齢推定等
基本的な矯正装置の種類と適応
→運動機能療法等
永久歯萌出順序とその異常
→連続抜去法等
対策:
基準点と角度、装置の種類は必ず覚えましょう。臨床問題はワンパターンであることが多く、基礎的なことをしっかりおさえれば対策できがちです。お決まり問題以外は読めないところもあるため、対策は中盤に行っても全体に影響は与えにくいかと思います。
●歯科放射線学
出題:
X線写真の読影(特に病変の鑑別)
パノラマとデンタルの違いと使い分け
放射線被曝量とその管理
対策:
読影はほぼ全ての分野で出題されるので、基本的な事項をおさえましょう。撮影の原理や歯科用X線撮影の使い分け、年間被ばく量、医療被曝・体内被曝における日本の特徴、放射線防護、放射線治療など覚える事項は意外に少ないです。中盤での対策がおすすめです。
●歯科麻酔学
出題:
局所麻酔薬の種類と作用機序
伝達麻酔(下歯槽神経など)の手技
全身管理(ASA分類、モニタリング)
対策:
血液検査や救急処置について覚えましょう。口腔外科の問題で検査値を読む際に練習できるようになるため、早期の対策がおすすめです。
●口腔衛生学/公衆衛生学
出題:
疫学調査方法(DMFT指数など)
フッ化物応用の公衆衛生的意義
保健医療制度(保険診療・介護保険)
対策:
口腔外科や小児科と同様の性質をもった分野です。非常に分量が多いですが最序盤に対策を行い、終盤に復習も行いましょう。実践の解説も豊富ですが、暗記を強めるためにDr.加藤シリーズも使用することがおすすめです。
●法歯学・医の倫理
出題:
インフォームド・コンセント
医療事故とリスクマネジメント
カルテ記載の法的義務
対策:
必修対策を行っていると関連問題が出てきます。覚える量は少なめなので、他分野対策の合間での対策も可能です。
まとめ
以上がおおまかな解説になります。対策を始める際は本番までのざっくりしたスケジュールを余裕のある状態で立て、得手不得手に合わせて調節しながら、時間の無駄を作らないことに気を付けて行っていきましょう。
CES歯科医師国試予備校 C先生
東京医科歯科大学首席卒業。CES歯科医師国家試験予備校講師。進級対策、国試対策ともにすべての範囲を担当しています。一見難しく感じる問題もわかりやすく解説します。