歯学部進級・卒業試験対策|丸暗記から使える知識へ。思考型学習への転換戦略

歯学部進級・卒業試験対策のための思考型学習で勉強する学生のイメージ

はじめに:試験の壁は”知識量”ではなく”使い方”にある

歯学部の学習は、1年ごとに難易度が大きく上がっていきます。特に進級試験・卒業試験は、単なる暗記では通用しない「理解の深さ」と「応用力」が求められます

「過去問を繰り返しても点数が伸びない」「内容は覚えているのに選択肢で迷う」――。

この壁を突破するために必要なのが、“覚える”から”使える”への学習シフトです。ここでは、進級・卒業試験を確実に突破するための、思考力中心の学習戦略を段階的に解説します。

第1章 暗記型学習の限界――なぜ”覚えたのに解けない”のか

進級・卒業試験では、単なる知識再現だけでなく、知識の関連性・臨床的文脈が問われます。

暗記型学習の落とし穴

知識が断片化する

単語や数値を個別に覚えるだけでは、出題形式が変わると対応できません。

臨床問題に弱い

実際の症例や画像が出ると、「覚えた情報をどこに使うか」がわからなくなります。

記憶の定着率が低い

知識が”つながり”を持たないため、時間が経つと急速に忘れてしまいます。

つまり、「量」ではなく「構造」で覚えることが、合格の鍵になります。

第2章 “使える知識”に変える3ステップ

進級・卒業試験を突破するための基本戦略は、次の3ステップです。

Step 1:関連づける(Concept Linking)

一つひとつの知識を”孤立”させず、因果関係で結びつけることです。

例:歯周病の進行を理解する際

「細菌感染 → 炎症反応 → 組織破壊 → 臨床症状」

この流れを図解化し、原因と結果を対で覚える。文字での暗記による定着率が恐ろしく低いことは研究で証明されているため、図や絵を使うことは大きなポイントです!

Step 2:説明できる(Verbalization)

「なぜそうなるのか」を自分の言葉で説明できる状態にすることです。他人に教えるつもりで解説ノートを作ると、理解の穴が明確になります。

かといってノートに向き合い続けるのも非効率で疲れてしまうので、説明はステップごとに箇条書きにしてざっくりメモを作ったら目を閉じて脳内で解説を繰り返しましょう。図そのものの暗記、記述や面接で必要になる説明力向上にも役立ちます。

ポイント

  • 教科書の定義を“置き換え表現”に変えてみる。
  • 図を見ながら「この変化は何が原因か」を口に出して説明する。

Step 3:使って確認する(Application)

問題演習や模試を通して、「知識を使う練習」をする段階です。1問1問を“思考のトレーニング”として捉えます。

復習時の分析例

状況分析の視点 解けた問題 間違えた問題
分析観点 正答の根拠を言語化できたか? 知識不足か? 理解不足か? 読解ミスか?

▶スマホは横スクロール

この「復習分析」を積み重ねることで、知識が”使える形”に変化していきます。

第3章 思考型学習を支える「ノート」と「演習」の作り方

1. 思考ノート(理解中心ノート)を作る

ノートは”情報を写す場”ではなく、“思考を整理する場”に変えます。

効果的な構成

  • 左側: 教科書の要点・事実
  • 右側: 自分の理解・関連づけ・疑問点

この「左右分割ノート」は、進級試験の最終整理にも役立ちます。

理解に基づいて要点を書き直し、関連を思い出しながらメモ程度に書き足すだけでも大丈夫です。思い出す行為を繰り返すことがポイントです。

2. 演習ノート(問題分析ノート)を併用する

問題集で間違えた問題だけをまとめる「ミスログ」を作成します。

これは国試前にも知識の穴埋めに便利なのでとても重要です!!

記録内容の例

  • 問題番号/分野
  • 誤答理由(知識不足・判断ミス・読解不足)
  • 再確認メモ(次回の復習ポイント)

問題をやり直す余裕なんてある訳ない場合、誤答した問題の解答を解説を見ながらポイント付き(遺伝病を誤答したのであれば遺伝疾患と原因遺伝子の対応表など)で書き残すだけでも大丈夫です。

このノートを3周以上回すことで、試験直前の復習効率が大幅に上がります。

第4章 “思考力型”問題への対応法

卒業試験や統合試験では、「思考力型問題」が増加傾向にあります。これは単純な暗記ではなく、複数の知識を統合して答えるタイプの問題です。

対応戦略

1. 設問文を分解する

キーワードを「症状」「原因」「病態」「治療」に分類する。

2. 因果関係を線で結ぶ

“症状が出る理由”を説明できる形で整理する。

3. 選択肢を”根拠法”で判断

「なぜこれは正しいか」を意識して選ぶ(消去法に頼らない)。

ただし正答を選んだ後消去的にも確認すること。なお、消去的に選ばざるを得ない場合もあるためその場合はあまり気に病まないように。

この手順を習慣化すれば、国家試験レベルの統合問題にも対応できます。

第5章 進級・卒業試験を乗り越える時間戦略

進級・卒業試験は、範囲の広さが最大の課題です。限られた時間を「どこに」「どれだけ」投資するかで結果が決まります。

効率的な時間配分例(6週間前〜)

期間 重点内容 学習目的
6〜4週間前 全範囲の総復習 知識の抜け漏れ確認
3〜2週間前 苦手分野の集中演習 得点の底上げと知識の定着
最終週 模試・過去問・まとめノート 実戦力と記憶の安定化

授業の忙しさから2年生以上にとっては全く現実的ではありませんが、理解するという前提であればある程度理想です。

4年生以上で慣れてしまえば作業を1週間に濃縮することも可能です。過去問の時間は必ず確保し、直近2年分程度を模試用に直近に残しておきましょう。まとめノートは過去問に書き込んでも可です。全範囲の総復習は過去問を解く前と後にそれぞれ行いましょう。初めに行うと過去問が解きやすくなって良いのですが、時間が無い場合は後だけでもなんとか役立ちます。苦手分野は総復習中に立ち止まって暗記ノートを作ったり対策すると効率的でしょう。

毎日の学習リズム(例)

  • 午前: インプット(講義ノート復習)
  • 午後: 演習(過去問・CBT問題)
  • 夜: 復習+整理(ノート・記録の更新)

第6章 学びを”継続力”に変えるメンタルマネジメント

進級・卒業試験は長期戦です。モチベーション維持も実力の一部です。

継続のコツ

  • 1日単位ではなく「週単位の目標」を設定する。
  • 学習仲間と演習日を共有し、ペースを維持する。
  • 勉強アプリやタイマーで”見える化”して達成感を可視化する。

学習は“量”よりも”継続性”で差がつきます。「昨日より1歩前進できたか」を指標にすることが、最後の得点力を生みます。

まとめ:思考型学習で「合格できる知識」を構築する

進級・卒業試験を突破するためには、知識を「覚える」だけでなく「使う」訓練を積むことが不可欠です。

  1. 因果関係で覚える。
  2. 自分の言葉で説明できる。
  3. 問題を分析して復習する。

この3つのサイクルを回すことで、進級試験だけでなく、国家試験・臨床実習でも通用する“思考型の学力”が身につきます。


著者プロフィール

CES歯科医師国試予備校 C先生

東京医科歯科大学首席卒業。CES歯科医師国家試験予備校講師。進級対策、国試対策ともにすべての範囲を担当しています。一見難しく感じる問題もわかりやすく解説します。