現役歯科医師が教える歯科医師国家試験合格のための「模試の活用法」と「戦略的学習計画の立て方」
模試を活用するための基本ステップ
6年生になると、国試受験に向けた様々な模試の案内が届きます。今回は国試に向けた模試の活用法について考えていきましょう。
まず、どうして模試が必要なのか。前期(6年生春頃)では自身の学力が全国の受験生の中でどのあたりに位置し、どの分野が平均に対して弱いのかを知り、年間計画を立てるために模試が必要になります。
ゼロ模試は形式が本番とは異なり問題数が少ないため特に上記の要素に特化し、CBTの記憶を掘り起こしつつ国試に気持ちを持っていくための模試ということになるでしょう。
中期(夏~秋頃)では臨床実習が終了する大学が増え、国試対策に集中する受験生が増えるため模試の全体順位はより本番に近いものとなります。
形式も本番同様となり、問題数の多さに耐えず集中力を切らしてしまうことが本番で発生しないように試験そのものに慣れるための模試という意味合いが大きくなります。春頃から力を入れていた苦手分野の正答率がどれだけ変化したか確認しましょう。
後期(冬~)では模試も少なくなり、順位の最終チェック、学習範囲の穴埋め、本番に向けた手慣らしの意味合いが大きくなります。
ただ、最終チェックに近いとはいえ、最終模試を受けてからとり全力で取り組み点数を伸ばす学生も少なくないため、順位が悪くてもあきらめてはいけません。
模試のデータ分析で学習効率を最大化する方法
次に、具体的に模試結果をどのように見て、何をすればよいか考えていきましょう。
おおまかに、前期は総合得点を上げること、中期は弱点をつぶしつつ頻出分野の得点を伸ばすこと、後期は易問正答率を確認し得点率を安定させることが重要となるため、成績表でそれらが分かる項目を確認するのです。
「総合成績」欄の点数を確認しましょう。
目安として、400点程度で合格の可能性は50%、450点程度で合格の可能性は90%だといわれています。当日は体調によって得点率が影響されてしまうため、模試では450点以上が安定してとれる状態を目指しましょう。
得点しやすい分野(得意分野、頻出分野)で高い正答率を出せば総合得点は上がります。受験に向けたメンタルケアのためにも、得点しやすい分野を早期におさえ、毎回の模試である程度の安心が保たれる状態にしましょう。
最終的に苦手分野でも得点できるようになる必要はありますが、苦手分野とはどうしても得点のばらつきが発生しやすいものなので、どうしても何かを捨てざるを得ない時には捨てても致し方ありません。
レーダーチャートを確認しましょう。
出題頻度が高い分野は良くも悪くも全体的に問題正答率が高く、浅い知識でも解ける作問で短時間の勉強でも得点を上げやすい傾向にあります。
一般問題であれば「衛生」「外科」、臨床実地問題であれば「小児」「矯正」「外科」がこれに当たります。
レーダーチャートで自身の正答率と全国平均を比較し、平均+15%をとれるようになりましょう。なお、必修では全範囲が出題されることも考えると、出題頻度の低い分野も平均程度の正答率を維持する方がいいと考えられます。
棒グラフを確認しましょう。
自身の偏差値が低い合格基準は何か確認しましょう。必修は絶対評価なので偏差値の意味はあまり大きくありません。
最終的に全ての合格基準において偏差値が50以上になるようにしましょう。
直前期には回ごとに偏差値が大きく揺れている合格基準がないか確認しましょう。安定していないといことは得点が模試の出題内容に左右されている、つまり勉強の穴があるということです。
合格基準の細かい項目での得点を確認しましょう。
総論Ⅰは「衛生」、Ⅷは「理工」がそのまま反映されており、暗記で対策可能です。各論では臨床実地問題の配点が高いため耳タコとは思いますが力を入れましょう。
各論Ⅰは「小児矯正」、Ⅱは「保存」、Ⅲは「外科」、Ⅳは「補綴」、Ⅴは「高齢者」です。ⅠとⅢについては9割の正答率が目安になります。
「易問正答率」を確認しましょう。
易問正答率が高いということは相対評価にて得点率が安定するということです。
正答率80%以上の問題では90%を、60~80%の問題では80%を目指しましょう。
国試合格までの計画:模試結果を活かす勉強法
全ての問題をみっちり復習するのは効率的ではないため、模試受験直後は誤答をざっと復習し、団体版成績返却時はざっと全体像を確認し、全国版成績返却時に誤答のうち正答率の高い(8割以上の)問題を周辺知識も含めて徹底的に復習しましょう。
模試受験直後からある程度時間が経っているため記憶定着効果も期待できます。受験直後に誤答をしっかり復習する方が合う方もいるとは思いますが、模試の復習のために普段の学習スケジュールを崩すことはあまりないように注意しましょう。
合格に向けた最後の追い込み!模試から得た知識を定着させる方法
模試は本番の予想問題として作成されています。誤答復習の際は解説を読んだ際に知らなかったことや改めてまとめたことをノートに書きとめ、次の模試直前や本番直前に試験で出ると思って見返しましょう。インプット回数が自然と増え、知識が定着しやすくなります。
模試の順位を見て一喜一憂してしまう方もいるかもしれませんが、6年の春に順位が悪いのは一年以上自分より長く受験勉強をしている浪人生がいるから当然です。
夏~直前にかけて順位が悪くても、本番では模試を受けていない人もいる、必修だって削除が発生する、模試の成績がそのまま本番の成績になるわけではないと考えてあきらめないようにしてください。
全体順位はあくまで参考に、自分の正答率を極限まで高めることを目標に頑張りましょう。