【国試問題解説】第118回歯科医師国家試験〜118D81

 

問題

No,118D81

 

記憶を形成する際に、海馬のシナプス後ニューロンへ流入し、長期増強(LTP)を引き起こすのはどれか。1つ選べ。

 

解説

選択肢 解説
a H+ H+の移動による機構としては、電子伝達系ATPを産生する際のプロトンポンプが挙げられる。H+は存在によってpHの変化をもたらし、酵素環境を変化させてしまうため、長期存在等が考えられる神経伝達に用いられるとはあまり考えにくい。よってaは×
b K+ K+はNa+と対をなして働くことが多く、高カリウム血症などにおいて細胞内K+濃度が高まると膜電位が高まり、活動電位が生じやすくなる。しかし通常はカリウムリークチャネルが存在するため、細胞内K+が増加してもすぐに流出し長期的な影響をもたらすことは難しいと考えられる。よってbは×
c Ca2+ Ca2+はシナプス小胞放出のトリガーや受容体が刺激を受容した際のメッセンジャーなどとして幅広く用いられている。長期増強という神経興奮を発生させやすくする、Na+のサポートに近い役割を担っていても違和感は少ないだろう。よってcは〇
d Cl- Cl-が細胞内に流入すると膜電位が低下し、活動電位発生に必要な電位変化が大きくなるため、神経興奮は起こりにくくなる。つまりCl-は抑制性に働く。よってdは×
e Mg2+ Mg2+は神経系ではグルタミン酸チャネルのブロッカー、Caチャネルの競合阻害薬としてはたらくが、ヘム鉄のようにクロロフィルの中心にはまり込んで機能する金属イオンとしてのイメージがより強いだろう。原子の大きなイオンは選択的なチャネルやポンプを形成することが難しいため、膜内外の移動によって他の作用をもたらすようなシステムは形成されにくいと考えられる。よってeは×

 

時間のある方は参考資料として

記憶の持続メカニズムを解明(Wikipedia)

に目を通しておきましょう。

 


 

著者プロフィール

CES歯科医師国試予備校 C先生

東京医科歯科大学首席卒業。CES歯科医師国家試験予備校講師。進級対策、国試対策ともにすべての範囲を担当しています。一見難しく感じる問題もわかりやすく解説します。