第119回歯科医師国家試験 合格率61.9%|既卒27.8%・第118回から急低下を分析

第119回歯科医師国家試験、合格率61.9%

第118回から急低下、既卒は27.8%で30%割れ タクソノミーの高い出題への対応がより重要に

厚生労働省が公表した第119回歯科医師国家試験の結果は、全体合格率61.9%、新卒80.2%、既卒27.8%だった。前回第118回は全体70.3%、新卒84.0%、既卒44.9%であり、今回は全体で8.4ポイント、既卒で17.1ポイントの大幅低下となった。とくに既卒合格率が30%を下回ったことは、近年の歯科国試の流れを考えるうえで見逃せない変化だ。第110回からの10年推移を振り返ると、今回の結果は単なる一時的な変動というより、タクソノミーの高い出題への対応力がこれまで以上に問われた結果として読む必要がある。

第119回は「全体が下がった回」であり、同時に「既卒が大きく崩れた回」だった

第119回歯科医師国家試験の受験者数は2,837人、合格者数は1,757人で、全体合格率は61.9%だった。新卒は1,849人受験、1,482人合格で80.2%。既卒は988人受験、275人合格で27.8%だった。

前回第118回は、全体70.3%、新卒84.0%、既卒44.9%であり、とくに既卒の落ち込みが際立つ。新卒も下がってはいるが、その低下幅は3.8ポイント。一方、既卒は17.1ポイント低下しており、今回の全体合格率急落の主因は、既卒層の失速にあったとみるのが自然だ。

また、第118回から第119回にかけて、受験者数は3,039人から2,837人へ202人減少したのに対し、合格者数は2,136人から1,757人へ379人減少している。単に受験者数が減ったから合格者数も減った、という説明では足りず、試験そのものへの対応の難しさが一段と増した可能性がある。

110~119回の推移はどう変わったのか

一覧で見ると、第118回の高さと第119回の急落が際立つ

回次 全体 新卒 既卒
第110回 65.0% 76.9% 46.6%
第111回 64.5% 77.9% 43.5%
第112回 63.7% 79.4% 38.3%
第113回 65.6% 79.3% 43.1%
第114回 64.6% 80.2% 36.9%
第115回 61.6% 77.1% 35.6%
第116回 63.5% 77.3% 42.2%
第117回 66.1% 81.5% 39.8%
第118回 70.3% 84.0% 44.9%
第119回 61.9% 80.2% 27.8%

※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。

この10年の流れを大づかみに見ると、全体合格率はおおむね60%台半ばで推移してきた。その中で第118回は70.3%と高く、近年ではかなり良好な結果だった。一方、第119回はそこから一転して61.9%まで下がっており、前回の反動というより、明確な難化を感じさせる数字になっている。

新卒はこの10年を通して概ね8割前後を維持している。もちろん上下はあるが、大きく崩れることは少ない。第119回も80.2%で、前回より低下したとはいえ、長期推移の中では極端な水準ではない。

それに対して既卒は、もともと新卒よりかなり低い水準で推移しており、4割前後を中心に上下してきた。第115回の35.6%や第114回の36.9%も低いが、第119回の27.8%はこの10年の中でも突出して低い。今回の結果は、既卒にとって近年で最も厳しい回の一つといえる。

なぜ第119回でここまで下がったのか

ポイントは「タクソノミーの高い出題」にある

厚生労働省は、第119回の合格率低下について直接の原因を示しているわけではない。そのため断定はできないが、近年の歯科医師国家試験の制度見直しの流れを踏まえると、今回の低下は偶然のぶれだけでは説明しにくい。

ここで重要になるのが、タクソノミーという考え方だ。歯科医師国家試験の出題基準では、タクソノミーは「評価領域分類」とされ、教育目標ごとに問題の解答に要する知的能力のレベルを整理する考え方として位置付けられている。一般に、タクソノミーが高い問題ほど、丸暗記だけでは対応しにくく、症例情報を読み取り、複数の知識を結び付けて考える力が必要になる。

近年の制度見直しでは、国家試験と共用試験の役割分担や、診療参加型臨床実習で培った能力をどう評価するかが繰り返し議論されてきた。厚生労働省の検討部会報告書でも、「より臨床に即した問題やタクソノミーの高い問題」の出題が推進される方向性が示されている。つまり、出題の方向性としては、単純な暗記確認型よりも、臨床に近い思考過程を問う問題がより重視されやすい流れにある。

第119回の結果を見ると、この変化への適応力の差が、数字としてより鮮明に表れた可能性がある。新卒は大学の最新カリキュラムや国試対策、臨床実習と連動した学習の中でこうした変化に触れている。一方、既卒は卒前教育のアップデートから距離が生まれやすく、知識の整理はできていても、タクソノミーの高い問題に必要な「考え方の型」まで十分に更新できていないケースがある。

その結果として、第119回では新卒の低下幅が比較的小さいのに対し、既卒では大幅な低下が生じたと考えると、今回の数字はかなり理解しやすい。

第118回と第119回の差は、単なる「難しかった」で終わらせない方がよい

第118回は全体70.3%、新卒84.0%、既卒44.9%と、近年ではかなり高い合格率だった。そこから第119回で全体61.9%、新卒80.2%、既卒27.8%へ下がったことで、「今年は難しかった」と一言でまとめたくなるが、それだけでは不十分だろう。

実際には、全体が下がった中でも、既卒が特に大きく落ちたという構図がある。しかも既卒合格率27.8%は、110~119回の中でも最も低い水準だ。ここには、単なる得点力不足ではなく、近年の出題傾向に対する適応の差が反映されている可能性が高い。

とくに、症例を読ませる問題、臨床判断を要する問題、複数分野を横断して考えさせる問題では、知識量だけでなく、設問文の読み方、論点の拾い方、選択肢の絞り方が問われる。これこそが、タクソノミーの高い問題への対応力であり、今後の既卒対策でより重視されるべき部分だ。

CES歯科医師国家試験予備校としてどう見るか

既卒対策は「知識の補充」だけでなく「思考の訓練」へ

第119回の結果は、既卒受験生にとって厳しい現実を突きつけるものとなった。ただし、この結果は悲観材料であるだけでなく、今後の対策の方向を明確に示しているともいえる。

今後は、単に知識を覚え直すだけでは不十分だ。必要なのは、症例ベースで考える訓練、設問の論点を見抜く練習、選択肢の比較検討、そして複数分野を横断した判断力の強化だ。つまり、タクソノミーの高い問題に対応できる学習へシフトしていくことが重要になる。

第110回から第119回までの推移を見れば、新卒は比較的安定している一方で、既卒は出題傾向の変化の影響を受けやすいことが分かる。第119回は、その傾向が最も強く表れた回だった。だからこそ既卒対策では、従来の延長線上にとどまらず、国試の「問い方の変化」に合わせて学び方そのものを見直す必要がある。

まとめ

第119回歯科医師国家試験は、全体合格率61.9%、新卒80.2%、既卒27.8%という結果だった。第118回から大きく低下し、とくに既卒は30%を下回った。110~119回の10年推移で見ても、この落ち込みは際立っている。

背景として考えられるのは、近年進んできた出題の実質的な変化、なかでもタクソノミーの高い問題への対応力がより厳しく問われたことだ。第119回は、歯科医師国家試験が「知っているか」を問うだけでなく、「臨床の文脈でどう考えるか」を強く問う試験になっていることを、改めて印象づける回となった。

出典

著者プロフィール

岩崎 陽一(いわさき よういち)

大手学習塾、国家試験予備校、医学部受験予備校での指導経験を経て、2011年に株式会社アクトを創業。現在は、CES歯科医師国家試験予備校をはじめ、医師国家試験、薬剤師国家試験など、医療系7部門において国家試験対策および進級指導に携わっている。

長年にわたり、多様な受験生・学習段階に向き合ってきた経験をもとに、国家試験の出題傾向、合格率の推移、出題形式の変化を継続的に分析。特に、近年の国家試験で重視される、単なる知識量だけではなく、思考力・判断力・臨床的文脈の理解を要する出題の変化を読み解き、受験対策へ具体的に落とし込むことを得意としている。

岩崎氏の強みは、歯科・医科・薬学を含む医療系7部門を横断して国家試験指導に携わっている点にある。単一領域にとどまらず、複数資格に共通する出題構造、制度改定、評価基準、学習設計の変化を俯瞰できるため、国家試験の動向をより立体的に分析できる。このような医療系国家試験を横断して得られる知見は希少性が高く、受験指導と試験分析の両面において大きな強みとなっている。