【歯学部受験応援コンテンツ】歯科医師の仕事や開業医と勤務医についての疑問などにお答えします。

開業医・勤務医の歯科医師としての仕事内容などを、現役の歯科医師に聞いてみました。

歯科医師の仕事

 

■はじめに

厚生労働省は、全国の歯科医師の就業状況について2年おきに全数調査をしています。

それによりますと、平成28年では歯科医師の総数が104533人、そのうち診療所に勤務している歯科医師が89166人で約85%、病院に勤務している歯科医師が12385人で約12%です。その他にも介護老人保健施設に勤めている歯科医師や行政職があります。

今回は、歯科医師のお仕事について、紹介します。

厚生労働省のホームページ

 

■診療所

診療所に勤務している歯科医師はおよそ約85%ですが、すべてが開業医というわけではありません。この数は開業医と勤務医の合計です。その内訳は、開業医が59482人で約57%、勤務医が29684人で約28%です。

開業医が勤務医の2倍ほどになることから、歯科医師の多くが開業指向にあり、少人数の診療所を運営していることがわかりますね。

開業医と勤務医別の平均年齢についてはこの統計にはのっていないのですが、診療所勤務の歯科医師の平均年齢は52.9歳でした。

一方、医師の場合診療所勤務の平均年齢は59.6歳です。医師は30代までは病院勤務がほどんどなのと、70歳を超えても仕事を続けている医師が多いことの反映です。

 

 

開業医について

歯科医師として開業して独立するメリットは、なにより自分自身の思う通りに診療が行なえることでしょう。

勤務医だと、院長の診療方針にどうしても従わなければならないので、「こうした方がいいのに」と思ってもできないことがあるからです。

一方、開業にはデメリットもあります。

歯科医院のほとんどが歯科医師数1〜2名の少人数での診療を行なっています。もし、病気やケガで仕事を休む必要が出た時、代診を雇うことが出来なければ診療が出来ないので収入がなくなります。身体が資本と言われるのはそれが由縁です。しかも事業主なので、雇用保険にも入れません。健康面のリスクは高いです。

 

また、開業医は管理者でもあるわけですから、従業員の健康管理、採用や雇用、福利厚生などの労務管理から、税務管理まで収入に直接結びつかない業務が多岐にわたります。歯科医師会に入会すれば、歯科医師会の仕事も無償でしなければならなくなります。

そして、最も気がかりなのが経営です。もし、患者が思うように集まらなければ、収入も少なくなり、多くの場合借金をして開業しているわけですから、立ち行かなくなれば・・・というリスクも抱えています。

 

勤務医

勤務医のメリットは、経営の心配や労務管理をしなくていいことでしょう。ある程度の点数を上げておかなければなりませんが、診療にさえ取り組んでいればいいというのは、ある意味気苦労が少なくてすみます。

デメリットは、院長との関係ですね。院長と性格が合えばいいのですが、そりが合わない時のストレスは大きいです。それだけでなく院長の診療方針に従わなければならないので、思うような治療を思う存分出来ないこともデメリットの1つです。

 

また、ブラックな診療所に勤めてしまったら、有給休暇を満足に取得させてもらえなかったり、なかなか昇給しない、土日も院長の用事(ゴルフや飲み会など)に付き合わされる等ということもあるかもしれません。

そんな中、微妙なのが分院長です。分院長とは、歯科医院を数軒経営しているような大きな歯科医院グループの1つの診療所を任されている勤務医の院長のことです。

 

書類上はそこの歯科医院の開設者になっていたりしますが、基本的には本院の勤務医の一人です。借金を背負わなくて済みますが、院長として従業員の労務管理はしなくてはならない上、分院の営業成績をあげるように本院から催促されます。その一方、事業主のように経費を使えるわけでもなく、とても中途半端な地位といえますね。

 

 

■病院

全歯科医師の90%弱が診療所に勤務していることから、歯科医師=歯科医院というイメージが形成されていると思われますが、実は病院に勤務している歯科医師も全体の10%ほどいるわけで、歯科医師のおよそ10人に1人は病院の勤務医であることがわかります。

 

この内訳は、大学病院等の医育機関の附属病院の勤務医は9308人、それ以外の病院の勤務医は3077人で、病院勤務の歯科医師の4分の3は大学病院等が占めています。

なお、医師の場合は逆です。病院勤務の医師は診療所勤務の医師の1.5倍で、医育機関の附属病院の勤務医を含めると2倍になります。

 

施設ごとの歯科医師数の推移を見てみると、30年ほど前は診療所に勤める歯科医師は5万人ほどだったのが現在は約9万人になっています。対して病院に勤める歯科医師は1万人弱でしたので、診療所勤務の歯科医師の増加に対し、病院勤務の歯科医師はさほど変わっていません。しかも病院勤務歯科医師の増加は大学病院関係の歯科医師の増加が主な原因なので、それ以外の病院の勤務歯科医師は30年ほど前からほぼ横ばいです。

病院勤務の歯科医師の枠がいかに少ないかということと、病院歯科があまり増えていないことがわかりますね。

 

 

■行政

歯科医師にも行政機関や保健衛生業務の採用枠があります。厚生労働省の技官や地域の保健所ですね。

しかし、この枠はほとんどありません。行政機関や保健衛生業務に従事している歯科医師は全体の0.3%でしかありません。

医師の場合は産業医を含めて1.2%です。行政機関に勤めているものに限れば、医師が0.5%、歯科医師が0.3%でほとんど同じです。

 

 

■防衛省・自衛隊

歯科医師の勤務先として、自衛隊の歯科医官という道もあります。

20代の若い歯科医師を対象とする医科歯科幹部候補生と、それ以上のキャリアを積んだ歯科医師を対象とする医科歯科幹部です。

どちらも年間の採用数は非常に少なく、門戸は狭いのが実情です。

採用されれば、陸海空各自衛隊の駐屯地や基地の医務室、自衛隊病院に勤めることになります。ほとんどが二佐まで昇進できますが、それ以上に昇進するのはポストが少ないので難しいです。

なお、歯科医師は幹部自衛官になりますが、戦闘部隊を指揮することは、たとえ歯科医師が最先任幹部になったとしてもありません。

 

 

■最後に

最近、女性歯科医師の占める割合が増えつつあり、現在は3人に1人は女性歯科医師となっています。この割合は、平成26年の調査と比べて約4%増加しています。

歯科大学や歯学部では女子学生の占める割合が50%に近づきつつあることから、今後も女性歯科医師が増える傾向は続くものと思われます。

 

女性歯科医師には男性歯科医師にはない出産や産後の育児というライフイベントがあります。

歯科医師国家試験の合格率の低下から、新規歯科医師が減少しつつあり、歯科医師の高齢化と相まって、将来の歯科医師不足が予想されます。そんな中女性歯科医師が出産や育児で離職すると、歯科医師不足に拍車をかけかねません。

女性歯科医師の育児支援制度は端緒についたばかりですが、より一層の拡充と復職支援プログラムの充実が望まれます。

 

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