【国家試験講評】第114回歯科医師国家試験

第114回-歯科医師国家試験

総評

去年と比べ全体的に新しい傾向の問題が多く見られ、やや難化したと感じる。
しかしながら、正解しなければならない問題(過去問をベースとした問題)もあり如何に過去問を分析し、丸暗記ではなく理解し思考力を培ってきた勉強法を取り入れた受験生が有利な問題であったといえる。

来年度から国家試験出題基準が改訂されるが歯科の知識だけでなく医科的な知識もこれまで以上に必要であり、思考力が非常に試される試験になりつつある。
国家試験に難易度の高低はあるが、合格基準と受験者のレベルが大きく変化することは無いため、例え難易度の高い問題と出会ったとしても惑わされずに平易な問題や既出問題を落とさないことが大切です。
とはいえ、必修問題は80%と絶対評価であるため多数派の意見が求められます。主観的な考えではなく客観的な考えを持つことも国家試験合格のポイントであります。

新型コロナウイルス(COVID-19)に関する問題は、来年度の出題基準改定後に出題される可能性があるため115回歯科医師国家試験を受験する受験生は細菌学・免疫学をしっかり勉強しておくことで必修対策にも繋がると考える。

臨床問題においても高齢者歯科学と補綴学に関連させた出題が多く、高齢者歯科学が得意でも補綴学に対して苦手意識があった受験生は解きづらかった印象があり全科目満遍なく勉強することが強く求められている試験であった。

 

歯科医師国家試験の施行について┃厚生労働省

 

❏ A問題での特徴的な問題

緊張している中で必修から解きづらい問題が多く時間が足らずに焦ってしまった受験生が多いと思う。特に来年度にも改変され出題されそうな問題をピックアップしました。

【A-1】薬剤耐性(AMR)対策に該当するのはどれか。1つ選べ。

a )海外渡航の禁止
b )PCR検査の実施
c )手指消毒薬の配布
d )抗微生物剤の適正使用
e )免疫グロブリンの投与

解答:d

 

 

【A-18】老年期のフレイルサイクルを図に示す問題

A-18

①はどれか。1つ選べ

a )悪液質
b )廃用症候群
c )サルコペニア
d )ジスキネジア
e )メタボリックシンドローム

解答:c

 

【A-26】睡眠時無呼吸症候群の問題

60歳の男性。医科からの紹介により来院した。ある装置を製作し、装着4週後に治療効果判定のための検査を医科に依頼した。製作した装置の写真を示す。装置装着前後の検査結果を表に示す。

A-26図1

A-26図2

a )経過観察
b )外科的療法の検討
c )睡眠体位指導の検討
d )装置の下顎前方移動距離の修正
e )持続的経鼻陽圧呼吸器適用の検討

解答:d

 

 

【A-35】歯面の白濁に対する処置だがBDR指標について詳しく勉強しておいたほうがよい

75歳の男性。前歯歯冠の白濁を主訴として、入所施設の職員から訪問歯科診療の依頼があった。6カ月前に脳梗塞後の片麻痺で入所したが、BDR指標はいずれも『自立』で、入所時には白濁はなかったという。初診時の口腔内写真を示す。
歯冠の白濁への対応といて適切なのはどれか。2つ選べ。

A-35

a )ホームブリーチ
b )ブラッシング指導
c )フッ化物洗口の指示
d )コンポジットレジン修復
e )フッ化ジアンミン銀塗布

解答:b、c

 

 

【A-38】嚥下調整食分類2013に問題。知らないと分からない知識問題である。

A-38

軟飯や全粥はどれか。上記の図から1つ選べ。

解答:4

 

 

【A-46】口腔機能低下症の問題

82歳の女性。食事中のむせを主訴として訪問歯科診療の依頼があった。Alzheimer型認知症で施設に入所している。ミールラウンドで食事の観察を行ったところ、食形態は普通食で、多量の食物を急いで搔き込む動作がみられた。
初診時の口腔内写真及び口腔機能評価の結果を表に示す。

A-46図1

A-46図2

口腔衛生指導とともにまず行うのはどれか。1つ選べ。

a )嚥下訓練
b )構音訓練
c )義歯の新製
d )舌抵抗訓練
e )食形態の指導

解答:e

 

 

【A-52】HIVに対する消毒薬の問題

ヒト免疫不全ウイルスに有効なのはどれか。2つ選べ。

a )ポピドンヨード
b )消毒用エタノール
c )ベンゼトニウム塩化物
d )ベンザルコニウム塩化物
e )クロルヘキシジングルコン酸塩液

解答:a、b

 

 

【A-60】深部線量率について問う問題

A-60

a )電子線
b )陽子線
c )ガンマ線
d )重粒子線
e )エックス線

解答:b、d

 

 

【A-78】PMTCについて問う問題。

超音波スケーラーを選んだ人も多いのではないかPMTCに用いるのはどれか。3つ選べ。

a )電動歯ブラシ
b )超音波スケーラー
c )ポリッシングブラシ
d )フッ化物配合ペースト
e )歯面研磨用ラバーカップ

解答:c、d、e

 

 

❏ B問題での特徴的な問題

B問題も解きづらく感じるが過去問ベースの問題をしっかり回答できるかが合否を分ける問題が多く感じた。

 

【B-6】認知症の検査(MMSEとHDS-Rの違い)

提示した図形を下に示す。この検査はどれか。1つ選べ。

B-6

a )CDR
b )FAST
c )FIM
d )HDS-R
e )MMSE

解答:e

 

 

【B-40】ICDASコード

ICDASコードで、肉眼では実質欠損は認めないが、歯面乾燥にエナメル質の白濁化を認めるのはどれか。1つ選べ。

a )コード0
b )コード1
c )コード2
d )コード3
e )コード4

解答:b

 

 

【B-42】AIDSの症状

後天性免疫不全症候群に伴いやすいのはどれか。すべて選べ。

a )毛様白板症
b )Kaposi肉腫
c )尋常性天疱瘡
d )口腔カンジタ症
e )壊死性潰瘍性歯肉炎

解答:a、b、d、e

 

 

【B-52】アクリル系機能印象剤の特性

アクリル系機能印象剤について正しいのはどれか。2つ選べ。

a )液に重合開始剤を含有する
b )アルコールの揮発により硬化する
c )粉末に芳香族エステルを含有する
d )粉末と液との混和によりゲル化する
e )ラジカル重合により硬化が促進する

解答:b、d

 

 

【B-55】オーラルジスキネジアの特徴

68歳の女性。上下顎義歯の接触音を主訴として来院した。1年前に気付いたがそのままにしていたという。3年前にうつ病と診断され、現在も抗うつ薬を服用している。他に特記すべき既往歴はない。初診時の口もとで繰り返される一連の動きの写真を示す。

考えられるはどれか。1つ選べ。

a )拘縮
b )ジストニア
c )アロディニア
d )ジスキネジア
e )Parkinson様症状

解答:d

 

 

【B-60】COVID-19に対するハイリスクアプローチ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するハイリスクアプローチはどれか。2つ選べ。

a )指定された病院での治療
b )全国民へのワクチン接種
c )感染者と濃厚接触者の健康観察
d )入国者に対する空港での体温測定
e )マスメディアによる予防方法の周知

解答:c、d

 

 

【B-82】バクチネーターメカニズムを問う問題

頬筋と上咽頭収縮筋の接合部に一致してできるのはどれか。1つ選べ。

a )頬小帯
b )口蓋舌弓
c )上顎結節
d )口蓋咽頭弓
e )翼突下顎ヒダ

解答:e

 

 

❏ C問題での特徴的な問題

1日目に比べると解きやすく感じたが、1日目の必修の難易度が高くメンタル的に選択肢に迷う受験生が多かったと思います。
今後も改変され出題されそうな問題をピックアップしました。

 

【C-12】ヒトの在胎期間(一般常識問題)。妊娠期間の母体の特徴を把握しておくこと。

ヒトの標準的な在胎期間はどれか。1つ選べ。

a )28週
b )32週
c )36週
d )40週
e )44週

解答:d

 

 

【C-22】GOHAIとOHIPの意味を理解し解答する問題

68歳の女性。下顎部分床義歯の不適合による咀嚼困難を主訴として来院した。使用中の義歯は3年前に装着したが、2カ月前から噛みにくくなり、噛むと義歯がたわむという。診察の結果、義歯を新製することとした。旧義歯の写真と新義歯の写真を別に示す。新旧義歯の検査結果の一部を表に示す。

C-22図1C-22図2

新義歯で改善されたのはどれか。すべて選べ。

a )咬合力
b )咀嚼能力
c )床辺縁形態
d )義歯床の強度
e )口腔関連QOL

解答:a、b、c、d、e

 

 

【C-27】エラストグラフィーについて問う問題

舌の腫脹を主訴として来院した患者の口腔内写真とある口腔内検査の画像を示す。

C-27
画像形成に最も関係しているのはどれか。1つ選べ。

a )血流の速度
b )組織の硬さ
c )糖代謝の量
d )水分子の拡張状態
e )エックス線減弱の程度

解答:b

 

 

【C-37】口腔潜在的悪性疾患は今後も必修などで出題される可能性がある

a )白板症
b )帯状疱疹
c )扁平苔癬
d )尋常性天疱瘡
e )慢性カンジタ症

解答:a、c、e

 

 

【C-38】ワクチン接種に関する問題

我が国でワクチン接種が行われているのはどれか。3つ選べ。

a )水痘
b )風疹
c )手足口病
d )ヘルパンギーナ
e )流行性耳下腺炎

解答:a、b、e

 

 

【C-46】オーラルディアドコキネシスについて問う臨床問題

76歳の女性。よだれが垂れることを主訴として来院した。夫から指摘されるようになったという。特記すべき既往歴はない。顔面の運動障害や知覚障害は認めない。診察の結果、ある訓練を行うこととした。訓練前と訓練中の写真を示す。

C-46
この訓練の効果を評価するのはどれか。1つ選べ。

a )RSST
b )MWST
c )舌圧検査
d )フードテスト
e )オーラルディアドコキネシス

解答:e

 

 

【C-51】パリ協定に関する問題

パリ協定(2015年)について正しいのはどれか。3つ選べ。

a )参加国に開発途上国を含めた。
b )参加国一律の目標値を設定した。
c )温室効果ガスの削減を目標とした。
d )経済活動よりも環境保全を重視した。
e )再生可能エネルギーの導入を推奨した。

解答:a、c、e

 

 

【C-69】嚥下時における舌骨の移動方向

嚥下に関する器官の模式図に示す。

C-69

嚥下開始時に舌骨が移動する方向はどれか。ア~オのうち1つ選べ。

解答:

 

 

【C-88】疫学の一般的な知識を問う問題である

ある地域の健常高齢者を対象に現在歯数が健康寿命に及ぼす影響を調査することとした。

この調査に適した研究方法はどれか。1つ選べ。

a )横断研究
b )介入研究
c )コホート研究
d )症例対象研究
e )生態学的研究

解答:c

 

 

❏ D問題の特徴的な問題

全体的に解答しやすい問題が多く、最後まで諦めずに解ききることが国試では重要であります。D問題は特に必修問題をこれ以上間違えることができないなどの体力面のみならずメンタル面でも点数に繋がると思います。去年の113回でもD問題は解きやすく実際平均点も高く、合否を分ける問題も多く感じます。
今後も改変され出題されそうな問題をピックアップしました。

 

【D-2】母乳栄養で欠乏するのは、ビタミンD,Kであるが過去の国試はKが回答であった。

母乳栄養で欠乏のリスクがあるのはどれか。1つ選べ。

a )ビタミンA
b )ビタミンC
c )ビタミンD
d )ビタミンE
e )ビタミンK

解答:e

 

 

【D-12】5疾病5事業の問題

医療法に基づく第7次医療計画(2018年)の5事業に含まれるのはどれか。1つ選べ。

a )遠隔医療
b )再生医療
c )周術期医療
d )終末期医療
e )へき地の医療

解答:e

 

 

【D-41】シェーグレン症候群とIgG4関連疾患の違いとその特徴

シェーグレン症候群と比較したIgG4関連疾患の唾液腺炎の特徴はどれか。2つ選べ。

a )女性に多い
b )唾液腺の圧痛を伴う。
c )唾液腺の弾性軟である。
d )唾液腺の腫脹が持続する。
e )唾液分泌機能の低下が著しい。

解答:c、d

 

 

【D-43】光化学オキシダントに関する問題

光化学オキシダントで正しいのはどれか3つ選べ。

a )光化学スモッグの原因である。
b )二次汚染物質としてPM2.5がある。
c )有機物の不完全燃焼によって生じる。
d )一次汚染物質として窒素酸化物がある。
e )紫外線によって二次汚染物質が生じる。

解答:a、d、e

 

 

【D-58】マイクロスコープから治療法を選択する問題

75歳の男性。上顎右側第二大臼歯の抜髄治療中のマイクロスコープ写真を別に示す。

D-58
次に行うのはどれか1つ選べ。

a )う蝕除去
b )根管拡大
c )髄室開拡
d )根管口明示
e )根管長測定

解答:c

 

 

【D-60】えん下困難者用食品のマーク

食品に表示されているマークを示す。
えん下困難者用食品に表示されてのはどれか。ア~オから1つ選べ。

D-60

a )ア
b )イ
c )ウ
d )エ
e )オ

解答:c

 

 

【D-64】梅毒の症状を問う問題。近年、梅毒感染者が増加のため出題されやすい。

晩発性先天性梅毒に見られるのはどれか。3つ選べ。

a )高口蓋
b )バラ疹
c )内耳性難聴
d )Fournier歯
e )虹彩毛様体炎

解答:a、c、d

 

 

【D-79】認知症のBPSDを問う問題。

認知症の行動・心理症状(BPSD)どれか3つ選べ。

a )失行
b )焦燥
c )徘徊
d )せん妄
e )記憶障害

解答:b、c、d

 

 

今後の対策

今後の対策として必要なことは、①過去問の分析②消去法による解答③現場型思考力を鍛える。この3つを重点的に意識し国家試験合格のための勉強を取り組むことが最低限必要だと思われます。

特に、私立大学歯学部に在学中の方々は6年次における卒業試験で進級判定が行われますが、卒業試験は国家試験と違った内容も多く勉強法が偏ってしまい現役での国家試験が非常に厳しくなってしまう受験生が多く見られがちです。例え、卒業できたとしても間違った勉強法が身についてしまい、多浪してしまう受験生も多いのではないでしょうか?

今、歯学部に在学している低学年の学生さんは、まだ国家試験は数年後だから大丈夫ではなく今のうちから基礎科目をギリギリの合格ラインではなく余裕を持った成績で必ず突破して下さい。

なぜなら、低学年で学習する基礎科目が近年国家試験の必修問題並びに一般問題で出題数が多くなっているからです。

さらには、4年次ではCBTが行われ全国私立大学の合格ラインは70%あたりでこの学年での留年率が高いことも事実です。CBT合格点は、国家試験合格と相関しているというデータもあり、低学年の学生さんは在学中の国家試験だと思う気持ちで80%~90%の得点率で5年次(臨床実)に進んで下さい。

 

当予備校では、苦手科目を克服するために一対一での個別指導(オンライン授業も可能)を行っております。歯科医師国家試験合格・進級試験に向けて一人一人の生徒様に合ったカリキュラムを構成し、授業を展開してまいります。
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CES歯科医師予備校
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